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2011年2月21日 (月)

「サンタ来なかったよ」

今年は月曜日のコラムは、なるべく皆さんが元気になるよう記事を心がけています。でも、今朝はちょっとやるせない気持ちで、いっぱにになりました。

どうぞ最後まで一気に読んで頂ければと思います・・・

 中学三年生のタカシ君(15)は、名古屋市の自室で首をつって死んだ。リーマン・ショックの余波で世界経済が揺れ続けた2008年12月28日のことだ。

 死ぬ三日前のクリスマスの朝、親友に電話をかけて聞いた。

 「サンタクロース来た?」

 「うん、来たよ」と親友。

 「僕のところにサンタクロースは来なかったよ」。そう言って、電話を切った。遺書はなかった。

 「先生、サンタっているの?」タカシ君は、そんな質問をする子どもだったと小学六年の時に担当だった幸子先生(52)は言う。 「何度も聞いてきた。当時は変なことを聞くなぁとしか、思えなかった」

 勉強が苦手だけど、「もっと漢字を書きたい」というタカシ君のために、先生は放課後も時間をとって教えた。タカシ君は、卒業してからも先生に会いにきた。別段用事もなく「近くに来たから・・・」と言っては、にこにこ笑っていた。

 幸子先生は長年、名古屋市南西部で教えてきた。修学旅行の積立金や教材費などを、行政が肩代わりする就学援助を受ける児童が市内で最も多い。半分に達するクラスもある。

 タカシ君も就学援助を受けていた一人だ。母親(42)は糖尿病や脳梗塞など複数の持病を持つ。耳に障害のあるトラック運転手の継父(48)にとり、治療費は重荷だ。

 タカシ君は四人きょうだいの上から二番目。長男のタカシ君は、小学生のころから体の悪い母親に代わり、炊事や掃除など家事をこなした。

 小学校の時の夢は、母親の病気を治したいと、「医者」。それが、中学卒業後の進路希望は「家事手伝い」に変わった。

 親に歯向かったのはたった一回。 「なんで、僕ばっかりなんだ」と泣いた。死ぬ直前、母親の介護で一ヶ月近く中学校を休んでいる時のことだった。

 「タカシがいないと家が回っていかなかった。頼りすぎていた」と母親は言う。

 タカシ君がサンタクロースからのプレゼントをもらえたのは、小学校の低学年まで。それ以来、クリスマスイブの楽しみは家族で食べる一人一つずつのショートケーキだった。

 でも、その年は、ケーキさえ買えなかった。本当にお金がなかったという。

 経済的に苦しい上に、地域とのつながりもなく、孤立する親と子どもたち。そんな家庭が確実に増えていると、幸子先生は感じている。

 昨年末、母子家庭の小学生が幸子先生のクラスに転入してきた。家庭訪問すると、離婚したばかりの三十代の母親は目に涙をためてこう言った。

 「子どもを連れて死にたい・・・」

 タカシ君は、一人追い詰められて死んでいった。「サンタは来なかった」と言い残して。 「あの子にとっては、サンタが夢や希望の象徴だったんだ」と幸子先生は、気づいた。

 先月初めて、先生はタカシ君の遺影に線香を上げに行った。

 「先生、サインに気づけなかったよ」。遺影は無邪気にほほ笑んでいた。(文中仮名)

2011年2月21日 東京新聞 社会部記事より全文掲載

今朝起きて、新聞でこの記事を読み、私は涙が止まりませんでした。すぐにパソコンに向かい、今こうしてこの記事をアップしています。

あえて全文掲載したのは、この記事が地方新聞のひとつの記事でしかないため、一人でも多くの方に読んで頂きたいと思ったからです。

自らの命を絶つことは、悪いことだといいます。でも、本当にそうでしょうか。

タカシ君が「遺書」を残さなかったのは、彼の最大の「やさしさ」と「おもいやり」なのではないかと、私は思います。

親やきょうだい、先生や友達、周りの大人達に、タカシ君が言いたかったことは、たくさんあったと思います。それを何一つ言わず、タカシ君はこの世を去っていったのです。

中学三年生で、サンタクロースなんて幼稚だと笑う人がいるかもしれません。しかし、サンタが来なかったから絶望して死んだのではないと思います。タカシ君にはこの先の夢も希望も、思い描くことすらできない状態だったのではないかと思います。

私はタカシ君が天国でたくさんのご先祖様や友達と出会って、幸せに暮らしていると感じます。2009年も2010年のクリスマスも、きっとタカシ君のところには、サンタクロースがたくさんのプレゼントを持ってきてくれたと思います。

でも、タカシ君は、「僕のプレゼントは一つでいいよ。あとは他の子にあげてね」とサンタに言ったと思います。

タカシ君のご冥福を心からお祈りいたします。

 

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